進撃の巨人
巨悪に立ち向かうヒーロー、という構図は、少年漫画では最も古い形の手である。本作も巨大な敵に立ち向かい、倒す事が目的なのだが、立ち向かう側の人々に比べて、敵があまりにも強く、正体が解らない。人々は敵を見て恐怖し、行動が制限される上、大した兵力も効果的な兵器も持たないのである。作品全体が、恐怖とそれに立ち向かおうとする気迫、しかし更にそれを手折る程の恐怖の連続で覆われているのだ。
舞台は現代よりだいぶ先の未来なのだが、人を食う3~15m、一番大きいもので50mもある巨人達によって、人類は大幅に人口を減らし、三重の壁を築き、その中で屈辱を舐めながら、貧しい暮らしをしている。長きに渡って、外の世界を取り戻す為、人々は兵を集め、戦い続けているのだが、巨人は大きいだけでなく、異様な高温の体熱を持ち、うなじにあたる部分の肉を切り取る事でしか殺す事は出来ない。そうしなければ、頭を落としても再生するような、恐ろしい生物なのだ。大砲や銃器ではなく、人が刃物で戦うしか対抗策はない。主人公・エレンも、母を巨人に食われた事や、外の世界への憧れから、巨人に立ち向かう兵士となるのだが、まだ物語も序盤であるというのに、どんどん仲間が死んでいく。はっきり言って、夢も希望もないのだが、それ故の重い絶対的な感情、決意がキャラクター達を浮き立たせている。命を長らえようと戦いを放棄しようとする者が、命を賭して巨人を滅ぼそうとする者の言葉に奮い立つ事もあるが、戦う方がマシ、といったような意志の下にある者も多い。巨大な死を臨む状況と、ストレスがすぐ隣にあるのだ。故に、何故戦うのか、という気持ちが明確なエレン達の輝きがとても力強い。人類がこれから如何にして巨人に対抗してゆくのか、そしてその心はどう変わってゆくのか、非常に楽しみな作品である。